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心に移りゆくよしなしごとを、教育、音声言語、認知科学、環境倫理などの視点から、そこはかとなく書いています
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繰り返しは偉大である  9.泳げない人が1年間プールに通って泳げないことがあるか
のこぎりの使い方やギターの弾き方なども長期記憶である。こういったいわゆる技術の記憶は手続的記憶と呼ばれる。小さい頃からずっとピアノを習っていた人は、おそらく今でも簡単にピアノを弾けるであろう。繰り返しによって長期記憶に刷り込まれるからだ。繰り返せば人間がやれるたいていのことはできるようになる。たいていというのは、元来人間が肉体的条件などでできないこと、例えば「空を飛ぶこと」など、は繰り返してもおそらくできないだろうと推測されるからである。しかし、他の人ができることは繰り返しによってほぼできるであろう。逆にいえば、繰り返さなければ長期記憶には送られず、力とはならない。こういう簡単な原理が多くの人になかなか理解されない。全く泳げない人が毎日プールに通って1年たってもまだ泳げないということがあるだろうか。おそらくない。現役時代のイチローは、シーズンオフに日本に帰ってきてもほぼ毎日バッティングなど相当量の練習を繰り返していた。三浦カズは50歳を超えても、毎日同じ練習を繰り返している。天才と呼ばれる彼らは、実は天性の素質ではなく繰り返しで作られている。     (2021.6.30  続く)

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繰り返しは偉大である  10.繰り返しの力は偉大である
私も何人かのマジシャンを知っているが、うまくなる秘訣は練習あるのみという。私のマジック経験からもそれは間違いないと思っている。「才能があっていいね」と言われることがある。生まれつきマジックが得意な人間がいるはずがない。「もって生まれた才能」「天性」などという言葉はまやかしである。親が陸上の選手で子供も遺伝子をもち走るのが速いということはあろうはずがない。後天的に獲得した形質が遺伝するとは考えにくい。子供が熱心な親に走らされたか、親を見て走りを繰り返したということだろう。高校の前半、剣道部に所属していた。部の中では全くうまくなかったが、体育の授業の剣道がある日は剣道部というだけの理由で見本をやらされる。その時だけはドヤ顔になる。その後、懸垂を繰り返すことを続けたらMAX20回できるようになった。今でも10回は軽い。繰り返すだけで染み。経験から言うと、マジックでも懸垂でも剣道でも週に2回以上繰り返すと向上する。週に1回だと維持で終わる。2週間に1回だと後退する。この回数は年齢に依存する。高齢になると、週に2回以上やらないと維持できない。母親は現在89歳になる。80歳になる前から連日任天堂DSでの脳トレをやらせている。そのためか、認知症になるかならないかのぎりぎりのところで踏ん張っている。短期記憶は非常に衰えているが、まだ認知症と診断されてはおらず普通に生活している。「努力をすれば報われる」は陳腐な言葉に感じるが、これがかなり正しいことを若い人や子供に伝えたい。繰り返しの力は偉大なのである。
         (「繰り返しは偉大である」 2021.7.1  終わり)

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子供の質問にはすぐ答えてはいけない  1.トークショー
先日、元子役のS木F君がコメンテータとしてTVに出ていた。現在16歳で高校生になったらしいのだが、数年前彼がまだ小学校6年生の時に、立川のあるところでF君トークショーをやっていたことがある。たまたまそこを通りかかって覗いてみたらトークは既に始まっていた。F君はま4、5歳のイメージがあったので、6年生ということでびっくりした。
司会「この夏休みは楽しかったですか? 何かいいことありました?」 
F君「いいことありました。」 
司会「そうですか、どんないいことでした?」 
F君「自由研究で優秀賞をもらいました!」 
司会「え~、そうだったんですか。すごいですね。どんな研究だったんですか?」 
F君「おならの研究です。」 
司会「へ~、おならの研究ですか。何か新しいことがわかったんですか?」 
F君「そうです。おならは燃えることがわかったんです。」 
司会「へ~、すごい。どうやって調べたんですか?」
(2021.7.7  続く)

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子供の質問にはすぐ答えてはいけない  2.研究って調べること?
F君は答えた。「インタネットで調べました」。一瞬耳を疑ったが、確かにそう答えた。あまりの衝撃に途中ながらその場を離れた。インタネットで調べることが研究なんだろうか? インタネットで調べて優秀賞。教員が決める優秀賞の基準を知りたかった。人のやった研究を調べることは、通常、研究の初期に行うことであり、先行研究調査と呼ばれる。あくまでも調査である。研究とは、端的に言ってしまえば、仮説を立てて、その仮説を実験などを通じて検証することである。F君もおならは燃えるという仮説を立てて、それを調査によって検証したのならまだ許せるのだが、どうもそうではなさそうな話の流れであった。仮説も結果もインタネットで調べたのでは、研究もへったくれもない。最近の小中学生の自由研究はほとんどネットによる調査なのだろうか。F君が、小さい頃に一緒に踊っていたA田Mちゃんにその後差をつけられたのもわかるような気がする。  (2021.7.14  続く)

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子供の質問にはすぐ答えてはいけない  3.分かれる反応
F君の自由研究の話を講演会とかセミナーとか授業ですると、聴衆が大人の場合はたいてい興味を持って聴いてくれ、インタネットで調べた内容での優秀賞はおかしいという反応が多い。信じられない、小学校の先生もおかしいと言う声も出る。中には、うちの子もそうそうという人もいる。ところが、大学の1,2年生の授業でこの話をすると、なぜそれがおかしいのかという顔をする。わからないことがあったら調べるには当たりだとの声もあった。大学で講義をしていて、こちらが言ったことや質問に関して、頻繁にスマホアクセスをしている学生が少なからずいる。教員の言ったことが信じられなくて確認しているのか、言葉の意味がわからず調べているのかわからないが、そのこと自体は悪いことではない。ただ、休み時間も食事中も歩行中も電車内でもずっとスマホアクセスしているのはいささか心配である。様々な情報を検索して、それらから理論を組み立てり、自分の仮説を検証するなど、思考をサポートするのであれば問題ない。しかし、朝から晩までずっと検索だけをしていないだろうか。学生の研究発表を聞いていると、調査しましたというのが結構多い。研究の出発点がF君のようなものだったのだろうか。研究の概念が変わってきているのか、まだ未熟で研究ということを知らないのかわからない。前者だとすると、彼らはこれから社会人になってもしかすると大学や企業の研究所に勤めるかもしれない。研究所の仕事はインタネット検索が主流になるという日がくるのかと思うとめまいがする。考えることが二の次になるということがあってもいいのだろうか?   (2021.7.21  続く)

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元研究者、元大学教員
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