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心に移りゆくよしなしごとを、教育、音声言語、認知科学、環境倫理などの視点から、そこはかとなく書いています
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自然と人工  4.語尾の母音が消える
普段しゃべるとき、語尾の「です」「ます」をどのように発声しているだろうか。「desu」「masu」のように発声している人は少ないと思う。どういうことか。実は、多くの人が「des」「mas」のように最後が子音で終わるように発話しているのだ。つまり、語尾の母音が消えているわけであるが、面白いことにほとんどの人はこれに気づいていない。これは「母音の無声化」と呼ばれる現象である。  我々は共通語で話すとき(標準語と呼ぶ人もいるが、日本では標準と定められた言語はないので、厳密には標準語ではない)、語尾が「です」「とき」のように、「ki」「ku」「shi」「su」などで終わる場合には「i」や「u」を発声せず、母音の無声化が起こる。正確には、無声子音の直後の「i」や「u」は無声化しやすいということになる。   (2021.3.26  続く)

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自然と人工  5.語尾以外でも
母音の無声化が起こりやすいのは実は語尾に限らない。「k」「s」「t」「ch」などの無声子音にはさまれた「i」や「u」もそうだ。たとえば、「ちから」の「chi」の「i」がいい例。しゃべってみるとわかるが、ほとんど「chkara」になっているのがわかると思う。無理に「i」を入れて「chikara」としゃべってみてほしい。力が入らないのではないだろうか。つまり、母音を無声化させた方がシャープできれいに聞こえるのだ。「ちしき」はもっと極端である。無声子音にはさまれた「i」は無声化しやすいので、「chshk」のようにも聞こえる。無声化した音節が2つ続くと1つしか無声化しないとされるが実際には無声化が続く。さらに正確にいえば、chの音節にはアクセントがあるのでiは完全には消えないことが多い。   (2021.4.2  続く)

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自然と人工  6.母音無声化の地域性
共通語では無声化が起こりやすいという話をしてきた。では、共通語以外ではどうなのか。たとえば、関西の人は「desu」「masu」と発声する人が多い。このように、無理やり語尾に母音を入れて発声すると関西風に聞こえることがある。共通語をしゃべっているように聞こえていても語尾が無声化していない場合、関西出身者の場合が多い。テレビなどでいろいろな人の語尾に注目(耳?)してみるとおもしろい。もちろん、他にも地域によって無声化しないケースも多く見られる。NHKのアナウンサーは、共通語を話すようにトレーニングしているので、ほとんどの人がきれいな無声化で話している。しかしながら、このようなトレーニングを受けていないレポーターの中には、共通語をしゃべっているにもかかわらず、「です」「ます」が無声化していないだけでなく、「でしイウ」のような、非常に聞き心地のよくない母音で終わる人もいる。   (2021.4.9  続く)

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自然と人工  7.自然言語と人工言語
無声子音の直後の「i」や「u」、無声子音にはさまれた「i」や「u」は無声化しやすいと話を続けてきた。ここで、「しやすい」とか「傾向にある」という表現に違和感を持った人もいるのではないだろうか。なぜ「無声化する」と書けないのか。それは我々の話している言葉は「自然言語」だからである。自然言語は人々の間で自然発生的に生まれたもので、いってみれば、最初に言語ありきであって、その後に文法などが整理されてきた。そのため、共通語において定められたルールではなく、関東周辺での言葉がたまたま無声化していたというだけに過ぎない。よって、あくまでも「しやすい」あるいは「傾向にある」としかいえないのである。自然発生的に生まれた自然言語は、いってみれば、人間同士の接点の人工物である。この自然言語に対して、最初に文法ありきというものが「人工言語」だ。いい例はプログラミング言語である。文法に則っていない文字列は理解されない。そういえば、数十年前に世界の標準語になるかと注目されたエスペラント語も人工言語である。人工言語は、人間と人工の接点でもあり、人間と人間の冗長ない接点でもある。エスペラント語はその後どうなっただろうか。   (2021.4.16  続く)

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